こんにちは。医療AI Insight Japanの運営者で、OpenEvidenceの日本を担当している前田です。
- 診察中にも使っているのか。
- 当直や診療後にも役立つのか。
- 医師の判断をAIに任せているのか。
このような疑問を持つ方は多いはずです。
米国の医師は、実際に生成AIを「いつ」使っているのかを調査しました。
結論として、米国の医師は生成AIを、診察中はもちろん、診療前、当直中、診察後、医療事務でも使い始めています。
ただし、AIに診断を任せているわけではありません。主に、情報確認、記録作成、患者説明、事務作業の補助として活用しているようです。
この記事では、米国の医師が生成AIをいつ使っているのかを、診察中と診察前後に分けて整理します。
米国での医師向け生成AIの全体像を先に知りたい方は、米国での医師の生成AI活用最新動向|AI検索・診療支援の広がりと課題も参考にしてください。
- 米国医師が生成AIを使う主なタイミング
- 診察中に使われる医療AIの具体例
- 診察前後で進むAIスクライブと事務効率化
- 医療生成AIを使う際に最低限押さえたい注意点
米国の医師は生成AIをいつ使う?診察中の事例

この章で解説する内容
- 米国の医師は診療中にAIを使い始めている
- エビデンスベースAIを診察中に使う実例
- 電子カルテ連携で即時確認
- AIスクライブで診察記録
- 当直中に医療AIで判断支援する理由
- 医療AIは臨床判断を補助
- 注意が必要:汎用性AIに相談
- 医療AIを使う前に確認したい注意点
米国の医師は診療中にAIを使い始めている
まず押さえておきたいのは、米国では生成AIがすでに診療の場で使われ始めていることです。
PubMedに掲載された「Patterns of Artificial Intelligence Use in Clinical Work by Hospitalists: A Survey Study」では、大都市の学術系三次医療機関で直接患者ケアに関わる病院勤務医などを対象に、AI利用状況を調査しています。
この調査では、70人にオンライン調査を行い、54人が回答しました。そのうち3分の2が、臨床現場でAIを使っていると報告しています。
使い道として多かったのは、臨床上の質問への回答、鑑別診断の作成、マネジメント選択肢の検討などでした。
つまり、米国の医師は生成AIを単なる文章作成ツールとしてだけでなく、診療中の疑問を整理し、判断材料を確認する補助として使い始めていることがわかります。
一方で、この研究はAIが医師の判断を置き換えていることを示すものではありません。
むしろ、AIは補助的な意思決定支援ツールとして使われており、医療機関にはガバナンス、検証、教育体制が必要だとされています。
エビデンスベースAIを診察中に使っている実例
米国では、エビデンスベースAIが通常の診察中にも使われ始めています。
ここでいうエビデンスベースAIとは、医学論文や診療ガイドラインなど、根拠となる情報を確認しながら回答する医療AIのことです。
また、2025年のOffcall調査報告では、エビデンスベースAIであるOpenEvidenceの普及率は、汎用AIであるChatGPTの約3倍に達したとされ、米国医師の約50〜65%が日常的なアクティブユーザーと推計されています。
この数字からも、米国の医師が診察中の情報確認において、汎用AIだけでなく、医療特化型のエビデンスベースAIを選び始めていることがわかります。
診察中の医師が知りたいのは、単なる一般論ではありません。
たとえば、薬剤の使い分け、追加検査の必要性、治療選択肢、併存疾患がある場合の注意点などです。
OpenEvidenceのようなエビデンスベースAIは、臨床上の疑問を自然な文章で入力し、関連する医学情報へ早くたどり着くために使われます。
このような動きから、米国では医療AIが診察中の情報確認に使われる段階へ進んでいることがわかります。
なお、使い方としては、AIが治療方針を決めるのではなく、医師が根拠を確認するまでの時間を短くする使い方です。
現在は、臨床上の疑問を自然な文章で投げかけ、関連する根拠を短時間で確認する流れが広がっています。
OpenEvidenceの特徴や注意点をより詳しく知りたい方は、OpenEvidenceとは?医師向け生成AIの特徴・注意点をわかりやすく解説で整理しています。
電子カルテ連携で即時確認
米国医師の生成AI活用で、大きな変化になっているのが電子カルテ連携です。
医師が別のブラウザを開いて検索するのではなく、診療の流れの中でAIにアクセスできる仕組みが広がっています。
AIが電子カルテの近くにあれば、診療中に生じた疑問をその場で確認できます。
Fierce Healthcareが、Cedars-SinaiとのAIツールの連携を報じた記事では、患者情報と医学エビデンスを結びつける方向性が紹介されています。
Epicのような電子カルテの中でAI検索を使えるようなることで、医師が診療画面から離れずに確認できる点で実務的で、まさに診療中でのAI利用を促進する流れです。
一方で、電子カルテ連携では患者情報を扱うため、院内承認、アクセス権限、ログ管理、データ保存期間などの設計が欠かせません。日本で導入を考える場合は、国内の個人情報保護、医療安全、院内システムの条件に合わせて検討することが必要です。
医師と患者の会話を聞き取るAIスクライブでカルテ作成
診察中に生成AIが使われる場面として、AIスクライブは非常に実用的です。
AIスクライブとは、医師と患者の会話を聞き取り、診療録の下書きや受診後の説明文を作る仕組みです。
米国では、外来診療で導入が進んでいます。
医師にとって、カルテ作成は大きな負担です。
診察中に患者の話を聞きながら、同時にキーボード入力を続けるのは簡単ではありません。
患者との目線や会話も途切れやすくなります。
AIスクライブが会話を整理すれば、医師は患者との対話に集中しやすくなります。
Cleveland ClinicのConsult QDによるアンビエントAIスクライブの解説では、同院でAIが臨床ワークフローをどのように変えているかが紹介されています。
さらに、Cleveland Clinicの患者との時間改善に関する記事では、医師がキーボード入力から離れ、患者との対話に集中しやすくなる点が示されています。
当直中や緊急外来に医療AIで判断を支援する
米国の医師が生成AIを使う場面として、当直中での活用へのニーズも高いようです。
WBUR Newsが紹介したサウスショア・ホスピタルの論文では、夜間当直中に薬剤過量摂取が疑われる患者へ対応する場面で、医師が判断材料を確認した事例が発表されています。
夜間や休日の診療では、人手が限られます。しかも、扱う症状は幅広いです。
このとき医師が求めているのは、今の判断に必要な医学情報へすばやくたどり着くことです。
当直中は、患者本人から十分な情報を得られないこともあります。また、救急搬送では、服薬歴や既往歴が不明なまま判断するケースもあります。
こうした場面で、医療AIは確認作業を早めます。医師の確認作業を早める補助線として扱うのが安全です。
例えば、医師がAIに対して、確認すべき項目を示すことで、治療のみならず家族や救急隊に聞くべき内容も整理しやすくなります。
こうした事例を見ると、医療AIは当直医のセカンドチェックとして使われていることがわかります。
医療AIは臨床判断を補助

米国の医師が生成AIを使う場面には、共通点があります。
AIを臨床判断の補助に使っている点です。
つまり、AIが医師の代わりに診断するわけではありません。
医師が考える材料を増やすために使っています。
医療AIの役割は、答えを出す機械ではなく臨床判断の地図を広げる道具として使われています。
医療AIを使う前に確認したい注意点
ここまで紹介した通り、米国では生成AIが診察中、診療前、診察後、医療事務などで使われ始めています。
ただし、どの場面でも共通して大切なのは、AIの出力をそのまま使わず、医師や医療機関が確認する前提で運用することです。
特に、患者情報、院内承認、シャドーAI、同意取得、ログ管理、責任範囲は整理しておく必要があります。
この記事では、米国医師が生成AIをいつ使っているのかを中心に扱っています。
医療AIのリスク管理や院内ルールの作り方については、医療AIガバナンス完全ガイドで詳しく整理しています。
米国医師は生成AIをいつ活用する?診察前後の事例

この章で解説する内容
- 診療前にAI検索で確認する理由
- 診察後に患者説明を作成
- 医療事務でコーディングAI
- 米国医師の生成AIはいつ使っているのか?
診療前にAI検索で確認する理由
米国の医師が生成AIを使うのは、診察中だけではありません。
診療前の準備でも使われます。
AIが情報整理を補助すれば、医師は診察中により具体的な質問をしやすくなります。
診療前のAI問診という観点では、Google ResearchのAMIEに関する臨床研究紹介では、会話型診断AIを実際の臨床前段階で検証する取り組みでの効果が説明されています。
生成AIは、医師が確認すべき論点を下書きとして示すことで、その後の診察の質を高める準備作業として使うことを可能にします。
診察後に患者説明を作成
診察後の生成AI活用として代表的なのが、患者説明文や受診後サマリーの作成です。
医師は診察の最後に、さまざまなことを伝えます。
- 診断の見通し。
- 薬の飲み方。
- 検査の予定。
- 再診の目安。
- 注意すべき症状。
こうした内容を、患者にわかりやすく伝える必要があります。
ただ、忙しい外来では、すべてを文章にする時間が足りないことがあります。
AIツールの中には、診療中の会話をもとに、診療録や受診後の説明文を作る機能もあります。(OpenEvidenceのVisits Overview)
生成AIは、患者説明文の下書き作成で役立ちます。
- 医学用語を患者向けに言い換える。
- 注意点を整理する。
- 家族にも伝わる文章に直す。
こうした作業を補助できます。
患者にとっては、診察室で聞いた内容を後から見直せるメリットがあります。
不安の軽減につながる場合もあります。
患者説明文、紹介状、退院サマリーなど、医師の日常業務で生成AIをどう使うかを具体的に知りたい方は、多忙な医師向け生成AI活用術で実践例を整理しています。
医療事務でコーディングAI
米国医師の生成AI活用は、診察やカルテ作成だけではありません。
医療事務にも広がっています。
特に注目されているのが、コーディングや請求支援です。
米国の医療制度では、診療内容に応じて診断コードや診療行為コードを整理する必要があります。
この作業は、医療機関の収益にも関わります。
ミスがあると、請求漏れや不適切請求につながる可能性があります。医療コーディング支援に関しても機能拡張を進めているAIツールもあります。
OpenEvidenceのCoding Intelligenceでは、臨床文書をもとにICD-10、CPT、E/Mレベルなどの候補を提示する機能が紹介されています。
コーディングAIは、カルテの内容からコード候補を提示します。医師やコーダーは、候補を確認しながら、請求漏れや不適切な請求を減らせます。
医師にとっては、診療後の事務作業が軽くなる可能性があります。
なお、米国での事例を日本の医療機関が参考にする場合も、注意が必要です。診療報酬制度が違うため、そのまま置き換えることはできません。
まとめ:米国医師の生成AIはいつ使っているのか?
ここまで見てきた通り、米国医師の生成AI活用は、診察中だけではありません。
診察前後にも広がっています。使われる場面は多様です。
ただ、共通点はあります。
医師の判断を置き換えるのではなく、情報確認、記録、説明、事務処理を支えることです。
米国での医師向け生成AIの全体像や市場の広がりについては、米国での医師の生成AI活用最新動向|AI検索・診療支援の広がりと課題でも詳しく整理しています。
この記事と合わせて読むことで、いつ使うのかだけでなく、なぜ米国で導入が進んでいるのかも理解しやすくなります。
米国の事例を見たうえで、日本の医師が日常診療や文書作成で生成AIをどう使えるのかを整理したい方は、多忙な医師向け生成AI活用術も参考になります。
- 米国医師は診療中の疑問確認に生成AIを使い始めている
- エビデンスベースAIは診察中の根拠確認を補助する
- OpenEvidenceは根拠確認を短時間化する医療特化型AI
- 電子カルテ連携は画面移動の負担を減らす仕組みになる
- AIスクライブは会話を診療録下書きへ整理する技術
- 当直中は薬剤や緊急対応の確認補助として使われている
- 診察後の患者説明文作成にも生成AIが使われている
- 医療事務ではコード候補や請求確認の補助が進む
- 生成AIは医師の判断を代替せず補助する位置づけになる
- 汎用AIは文章整理に便利だが臨床判断には注意が必要
- 患者情報や同意取得などの運用にはガバナンス設計が必要
- AIの出力は医師が確認し修正する前提で使うべき
- 米国事例は日本導入時に制度差を踏まえて考える必要がある
- 正確な情報は公式資料や専門家確認と合わせて判断する
- 米国医師の生成AIはいつ使うかを知ると導入判断がしやすい
なお、この記事で紹介した内容は、医療AIの活用傾向を理解するための一般的な情報です。個別の診断、治療、薬剤、検査の判断を目的とするものではありません。正確な情報は、公式サイト、診療ガイドライン、添付文書をご確認ください。最終的な判断は、必ず医師や薬剤師などの専門家にご相談ください。
