OpenEvidenceは2026年5月20日、米国ロサンゼルスを拠点とするCedars-Sinai Health Systemとの戦略的提携を発表しました。
本記事は、OpenEvidence公式発表「OpenEvidence Partners with Cedars-Sinai to Create Patient-Aware Clinical Intelligence With Agentic Clinical AI」およびCedars-Sinai側の発表内容をもとに、日本の読者向けに整理したものです。
OpenEvidence、Cedars-Sinaiと提携
Cedars-Sinaiは、米国有数の学術医療システムの一つとされ、年間100万人以上の患者に医療を提供している医療機関です。
臨床、研究、イノベーションの幅広い分野で知られています。
今回の提携では、Cedars-Sinaiの臨床医が、電子カルテを含む診療ワークフローの中でOpenEvidenceを利用できるようにし、患者さんの電子カルテ情報と医学文献を組み合わせて診療判断を支援することが目指されています。
Cedars-Sinai Health Systemの公式HPトップはこちら
OpenEvidenceは、米国の医師に広く使われている医療AI・臨床意思決定支援ツールです。
医師が臨床上の疑問を自然な言葉で質問し、査読済み医学文献や診療ガイドラインなどの医学的エビデンスに基づいた回答を確認できることを特徴としています。
今回の発表では、医師が複雑な臨床上の質問をした際、医学研究やガイドラインに基づくだけでなく、患者さんの過去の処置、併存疾患、内服薬、アレルギー、長期的な健康データなども踏まえた回答を得られるようにする方向性が示されています。
電子カルテシステム「Epic」とは?
今回の提携では、Cedars-Sinaiで使われている電子カルテシステムであるEpicの情報が重要な役割を持ちます。
Epicは、米国の医療機関で広く使われている電子カルテシステムの一つで、診療記録、検査結果、処方、既往歴など、診療に必要な情報を管理するために使われています。
今回の発表では、Cedars-Sinaiの臨床医が、電子カルテを含む日常の診療ワークフローの中でOpenEvidenceにアクセスし、患者さんの電子カルテ情報と医学文献を組み合わせて確認できるようにすることが目指されています。
今回の提携の意味するものは?何が変わるのか?
電子カルテ情報と医学文献を組み合わせて確認できる
これまでの医療AIや医学情報ツールは、主に「この疾患ではどの治療が推奨されるか」「最新の論文では何が示されているか」といった、一般的な医学情報を確認する用途が中心でした。
一方で、実際の診療では、同じ疾患であっても患者さんによって判断が変わることがあります。
過去の処置、併存疾患、現在使っている薬、アレルギー、これまでの健康データなどによって、注意すべき点は異なるからです。
今回の取り組みは、そうした患者さんごとの背景を踏まえて、医学文献やガイドラインを確認できるようにするものです。
医師の判断を置き換えるものではない
OpenEvidenceのCEO兼創業者であるDaniel Nadler氏は、医療は抽象的なものではなく、それぞれ異なる病歴や複雑さを持つ患者さんに対して行われるものだとコメントしています。
医学文献や診療ガイドラインは、臨床判断において重要です。
ただし、実際の診療では、それらをそのまま機械的に当てはめればよいわけではありません。
今回の取り組みは、医師の判断をAIが置き換えるものではなく、必要な情報をより早く、整理された形で確認できるようにするためのものと考えられます。
OpenEvidenceは、この仕組みを「Agentic Clinical AI」と表現しています。
臨床上の質問を解釈し、関連する患者情報を動的に集め、最新の医学文献を評価し、それらを組み合わせて文脈に応じた回答を生成するAIという意味合いです。
患者情報の取り扱いについて
今回の発表では、患者情報の取り扱いについても説明されています。
OpenEvidenceによると、電子カルテから参照される患者情報は、個々の患者さんの診療判断を支援する目的でのみ使用されます。
また、臨床セッション後にOpenEvidence側で保存されることはなく、その他の目的にも使用されないとされています。
医療AIが電子カルテと連携する場合、個人情報や医療情報の扱いは非常に重要です。
そのため、どの情報がどの目的で使われるのか、どのように保護されるのかは、今後も重要な確認ポイントになります。
日本で読む際に注意したい点
OpenEvidenceとCedars-Sinaiの提携は、米国の医療機関における電子カルテ連携に関する発表です。現時点で、日本国内で同じような電子カルテ連携や医療機関との提携の動きがありません。
回答の前提となる医療制度、薬剤の承認状況、保険適用、診療ガイドラインは、米国のものに基づいており、日本の状況と異なる場合があります。
現時点では、日本の診療ガイドラインを網羅的に読み込んだうえで回答する仕組みではありません。
日本でOpenEvidenceを利用する場合は、医学文献や海外ガイドラインを確認するための補助ツールとして捉えるのが現実的です。
実際の診療判断では、日本の診療ガイドライン、薬事承認、保険適用、所属施設の方針、そして担当医の専門的な判断を優先する必要があります。
OpenEvidenceは医師の判断を置き換えるものではなく、情報収集や確認を支援するためのツールです。
日本でのOpenEvidenceの使い方はこちらの記事を参照下さい。
今回の提携は、医療AIが今後どのように診療現場に組み込まれていくのかを考えるうえで、参考になる事例の一つです。
一方で、日本での活用を考える場合には、米国と日本の医療制度やガイドラインの違いを理解したうえで、慎重に位置づける必要があります。
出典・参考:
